2010年9月23日木曜日

通信回線を持ち歩く。

通信機器ごとに回線を契約するくらいなら、モバイルルータ1台に集約して料金を節約したい方がたくさんおられます。無線通信機器が最近増えているのに伴って、モバイルルータ1台で、回線契約をまとめたい、という方のためのエントリです。

今のところ、ルータの内側はすべて無線LANですが、外側は携帯電話系、PHS系、無線LAN系、そしてWiMAX系と大別すると4種類くらいあります。ひとつずつ、メリットとデメリットを検証していきます。

なお、調査結果は、あくまで中の人の調査結果であり、店頭ではもっとお得なキャンペーンを行っている場合もあります。結果的にお得にならなかった場合でも責任は負いませんのでご了承ください。

さて、まず前提条件として、モバイルルータの内側から始めることにします。こちらをインハウスと言います。インハウス通信は、無線LANで接続しますが、無線ということは電波を盗聴される心配がありますから、暗号化を行うのが普通です。

この暗号化を自動で行うのが、バッファローの開発したAOSSという仕組みですが、中の人は手動で設定することをおすすめします。自動処理は大変ありがたいのですが、自分で設定した方が、あとあとトラブルが起こったときに対処しやすいと思うのです。

暗号の方式には、TKIP、AES、WPA、WEPなど、いくつか方式があります。相互に互換性はありませんから、インハウスでご利用になる機器が、どの暗号方式に対応しているのか、という表を作るのが第一段階です。横軸に暗号方式、縦軸に機器を並べて、どの方式がよいのか調べてみましょう。

ちなみに、iPadでは、WEP、WPA2、WPA、WPAエンタープライズ、WPA2エンタープライズ、というのが暗号方式として設定可能です。また、中の人の持っているある機器では、WEP、WPAPersonal、WPA2Personal、WPA-EAPというのが設定可能でした。

PSPも起動してみましたが、こちらはWEP、WPA-PSK(TKIP)、WPA-PSK(AES)というのが設定できるようです。このように、接続する機器の暗号方式が、どれを使えるのか、というのをきちんと把握することが、複数の機器を利用するための第一歩です。 ちなみに、WPA-EAPというのと、WPAエンタープライズは同じもの、WPA-PSKとWPAパーソナルは同じものです。

さて、ここまで決まったら、次に外側に入ります。携帯電話系、PHS系、公衆無線LAN系、WiMAX系の4種類に分けて考察します。

さて、携帯電話系です。特徴は、携帯電話網を使っているため、利用できる範囲が非常に広いことがあげられます。たとえばPocketWifiなどがあげられます。こちらは、月額5000円弱で青天井になることはありません。ソフトバンクからも同じような商品が出ています。携帯電話系では、送受信が理論値で6Mから7Mとなっているため、いくら無線LANが理論値54M(g規格)であっても、ここがボトルネックになってしまいます。ただし、地下鉄でも使えることや、人口カバー率が広いことから、「とりあえずどこでも1台で使いたい」という場合にはおすすめです。

また、ドコモからはアクセスポイントモード対応携帯が発売されています。携帯電話とルータが1台になったような商品ですが、こちらの場合、パケホーダイの範囲で使おうとすると128K通信になってしまい、7Mを出そうとすると月額1万円程度かかってしまいます。この点には注意が必要です。

ハードウエアですが、携帯電話系では、店頭価格では1円、2年契約というのが一般的です。店頭の販売員やチラシ、Webサイトで十分に確認してください。月額料金はたまに最初の1ヶ月無料、次の12ヶ月を割引料金とする価格設定もあります。ランニングコストを十分に確認してください。

引き続いて、PHS系です。こちらは、文字通りPHS網なので、速度は最大で128Kです。月額料金は4千円程度となっています。特徴は、乾電池がそのまま使える、というメリットと、人口カバー率が高いこと、地下鉄でも利用できることがあげられます。

ひとつだけ、毛色が異なるのが、公衆無線LAN系です。モバイルルータを必要としない(ことがある)反面、場所が限られるというデメリットがあります。利用頻度や接続時間を十分に検討されることをおすすめしています。公衆無線LANは、ご利用いただいているプロバイダの付加サービスとして使えることもありますし、独自に契約が必要となる場合もあります。ローミングサービスを利用することもできます。ご利用になる場所がどこなのか、というのを十分にご確認いただく必要があります。

ただし、フレッツスポットについては、事前にご確認いただきたいのですが、接続する際にPPPoEという方式が利用できなければなりません。パソコンでは標準装備なのですが、機器によっては対応していないことがあります。iPadやPSPでは対応していません。この場合は光ポータブルが必要です。光ポータブルは、ポータブルWifiや、モバイルWi-Fiルータといった名称で販売されています。これを利用することで、フレッツスポットを利用することが可能となります。フレッツ利用者は月額300円でレンタルすることができます。単独購入の場合は3万円から4万円程度のようです。また、ドコモの回線契約とセットにすることも可能です。フレッツスポットを利用される場合は、この製品が必要、ということだけは十分にご注意ください。もちろん、この製品とフレッツスポットの契約があれば、ドコモの契約なくフレッツスポットの利用は可能です(中の人は回線契約をしていません)

また、公衆無線で問題が複雑なのは、携帯電話系や、次にお話しするWiMAX系の契約の付加サービスとしても提供されていることが多く、さらにローミング契約も存在することです。どこで使うのか、月額料金と利用頻度、利用場所を十分に検討されることをおすすめします。

最後に、WiMAX系です。こちらは、最大速度が理論値で40Mと、かなり高速で、無線LAN(g規格)と比較してもボトルネックを感じることが少ない回線といえます。また、月額料金も4千円から5千円と、速度のわりには低価格な設定です。また、契約期間の縛りがない(翌月解約でも違約金なし)場合が多く、心理的な抵抗も少ないのが特徴といえます。ただし、サービスエリアが大都市+県庁所在地程度なのと、地下では使えないことが欠点です。お使いのプロバイダの付加サービスとして提供されていることもあります。

家電量販店では、独自にサービスを提供している場合もあり、この場合は端末価格が半額や1円といったサービスもあります。また、公衆無線LANがセットになっている場合もあります。家電量販店では2週間無料レンタルができるところもあるので、電波状況を事前に確認するのもひとつの手です。

WiMAXの「地下では使えない」を補完するために、公衆無線LANがセットになっていることもあります。たとえば、ヨドバシの場合はワイヤレスゲート、UQの場合はUQ wifiといったサービスが無料で付加されます。たとえば中の人のように、メインは地下鉄で移動しており、ほとんど区内にいるような場合であれば、組み合わせることでカバーすることは可能です。

中の人の場合、WiMAXのヨドバシカメラプラン(NECのAterm)に、地下鉄で利用するためのフレッツスポット+光ポータブルを利用して、スマートフォンのパケット通信を利用不可に設定し、常にWifiで通信するように設定しました。これで、パケホーダイの5985円+moperaの315円(合計6300円)が、WiMAXに切り替えることで4480円+フレッツスポット210円、光ポータブルのレンタルで315円(合計5005円)となりました。1300円弱下がりました。iPadも利用可能です。ただ、ルータが2台ある面倒くささはありますし、地下鉄も駅のホーム以外ではつながらないので、十分に使いこなしているのか、という疑問は、自分自身でも持っています。

さて、ポイントをまとめます。まず、暗号方式を決めること。次に、使う場所や頻度、時間を考えること。その上で料金や契約形態を十分に検討し、ランニングコストから最適なプランを検討してください・・・・・って、こんな無難な結論でいいのかな。

また、ドコモが年内にも次世代通信規格であるLTEの商用サービスを開始する、という案内が出ています。理論値では75Mという圧倒的な速度ですから、今後の利用料金やエリアを含めて、ひとつのマイルストンとして検討の余地はありそうです。

最後に、通信料金の誤りを指摘いただいた @arcenciel2k さん、本当にありがとうございました。